オタク(元)弁護士の雑記帖

オタク弁護士だったけど弁護士を辞めてただのオタクになった人のブログ。

家賃高すぎ問題と敷金・礼金の意味

最近引っ越しを計画をしている。

部屋を探しているのだけど、東京の家賃って本当に高い。

これで子どもが生まれたりしたらどれだけの家賃がかかるのかと思うと鼻血が出そうだ。

 

東京の家賃は高い!

僕は東京育ちの人間で、ずっと東京で暮らしているのだけど、引っ越しをするたびに思うのは、「東京は本当に家賃が高い」ということ。

東京で働く方が給料が高いというけれど、家賃を差し引いた可処分所得を考えたら、仮に車の維持費を差し引いたとしても地方のほうが豊かな生活をできるのではないかと思いたくなる。

特に山手線の内側や、世田谷や豊洲のほうに住もうとすると、えらいことになる。

東京で育つと、未だに不動産信仰のある人に出会うのだけど、それもなんとなくわかる気がする。

おまけに、初期費用も高い。

敷金礼金を4か月入れると、1か月分の家賃と仲介手数料を合わせて、実に半年分の家賃を最初に差し入れることになるのだ。

まるでまとまった買い物でもするようだが、驚くことに借りた部屋は返さなければならない。

この初期費用って、どんな性質なものなのか?

と思った方は多いのではないだろうか。

 

「敷金」・「礼金」ってなに?

敷金は”あらかじめ預け入れるお金”

敷金というのは、最高裁判所が定義したことがあります。

「賃貸借存続中の賃料債権のみならず、賃貸借終了 後家屋明渡義務履行までに生ずる賃料相当損害金の 債権その他賃貸借契約により賃貸人が賃借人に対し て取得することのあるべき一切の債権を担保し、賃貸借終了後、家屋明渡がなされた時において、それ までに生じた右の一切の被担保債権を控除しなお残額があることを条件として、その残額につき敷金返還請求権が発生するもの」(最判昭和 48年2月2日民集27巻1号80頁)

 

 だとされました(太字・下線は筆者)。

なんだか小難しい定義がされていますか、要するに、「部屋を大家さんにを返す時に壊れていたり、家賃の未払いがあって、そのまま逃げられたら大家さんが困るから、あらかじめお金を預けてくださいね」というお金が敷金である。

つまり、家賃の未払いや、お部屋の原状復帰に必要なお金を除いて、余ったら敷金は返ってくるもの。

余談ですが、いまでも、たまに敷金も返さなくてよいと思っている大家さんがいるのには驚く。

 

ただし、最近たまに見かけるのが、「敷金は物件返還時に償却する」という規定が契約書に定められているもの。

これは個人的には消費者契約法違反で無効でしょと言いたいが、裁判例によれば適法であるとされているのが多数なので、気を付けたい。

これは、ようするに「お部屋を返す時に敷金を全額掃除とか壁紙張替えとかに使うから、敷金は一切かえしましぇ~~~んwwwwww」というもの。

そんな規定を契約書上設けただけで、敷金を返さなくてよくするなんて、まさに消費者契約法が規定する「(信義則に反して)消費者の利益を一方的に害する」ものだと思うのだけど、どうやらそれは認められないらしい。

だって、不動産屋さんで契約するときに、「敷金償却規定は削除してください」なんていったら契約できないでしょふつう。ただの痛い人だと思われて、「じゃあほかのところで探して」って言われて終わりでしょ。

一方的に仲介会社が作成した契約書にサインするという実態を考慮しないで消費者契約法違反かどうかを検討するべきだと思う。

愚痴が長くなってしまった。

敷金とは概ねそんなもの。

礼金家賃の一部払いという性質

礼金は贈与とみる向きもあり、その場合は消費者契約法違反で無効となる可能性があるが、いまはどうやら賃料の一部払いとみる考え方強いっぽい。

その場合、法的根拠がある家賃の一部という性質だから、返還請求ができないのが通常。

これも僕自身は、「交渉に応じてもらえなければ礼金は言い値で支払わなければ契約できない」ということになるから、借主側に一方的に不利で無効な規定だと思っているけど、どうやらその考えは通用しなそうです。

ちなみに、礼金というのは、関東大震災で家が倒壊しまくった時に、需給バランスがぶっ壊れて貸す側に対するインセンティブの意味合いで借主が支払ったのが始まりらしい。

「礼」金という名前が大家さんと入居者のパワーバランスを表していて、気持ちが悪いと感じる。

 

ちなみに、家賃の一部払いだと考えると、「2か月分礼金を入れるから、それを24か月(契約期間)で割った金額を毎月の賃料から差し引いてください」っていう交渉は合理的だと思うけど、それに応じる大家さんはほとんどいないといっていい。

 

貸主優位な初期費用については立法的に解決するしかない

そんなわけで、裁判で争われてもあまり芳しい結果は出ておらず、貸主優位な契約実態は変わっていない。

消費を増やそうといっても、所得の多くを済む場所に支払っている現状では、消費するお金がないのだから非効率だと思う。

 

さらに、裁判をやっても見通しが厳しいうえ、こういう事件はあまり弁護士は受けたがらない。

なぜなら、裁判をやる労力と、弁護士への報酬のバランスが悪すぎるからだ。

たとえば、礼金2か月分の返還訴訟を提起しようとした場合、家賃10万だとしても20万円の返還請求訴訟を簡裁にするということになる。

弁護士費用を考えると、着手金だけで完全に赤字案件になることが予想される。

 

そういう状況からすると、この状況を解決するには借主優位な最高裁判決を勝ち取るか、立法的に解決するしかないのだけど、そんな最高裁判決が出たら全国で返還訴訟が起きて社会は大混乱なので、ソフトランディングは不可能だ。

なので、立法的に経過措置とかを設けながら解決を図るしかないというのが個人的な意見。

まあ、その立法を行う政治家に献金をしているのは誰かと考えたら、そんな立法はされないのでしょうけど。

 

・・・落ち着いたらマンション買おうかな。